
1. No Ratingで従来の評価制度を見直す企業が増えている
「心理的安全性がもたらすチーム活性化」という記事で書きましたが、googleの研究チームが発表した「心理的安全性」という言葉は世の中に大きなインパクトを与えました。
「心理的安全性」の話の中では、社員の行動や評価に点数を付けること、つけられることが、本人やチームのパフォーマンスを発揮することの阻害要因になるのではないかということがいわれています。
また、近年、世界的な先進企業を中心に従来の点数やランク付けをする評価制度を見直し、NoRatingの制度を導入する企業が増えています。
代表的な例では、GE、GAP、マイクロソフト、アクセンチュア、アドビなど多くの企業で、従来の評価制度を見直し、点数付けしないいわゆるNoRatingの仕組みを導入する企業が増えています。
中でもGEといえば9ブロックという人事評価制度の代表的な仕組みを考えた企業。
そのGEも自ら生み出した評価制度を見直し、新しいNoRatingの制度を導入していることに従来の評価制度のままでは上手くいかない現代の企業の課題がうかがえるといえます。
2. 従来の評価制度における問題点
従来の評価制度とは、その多くは目標管理制度(MBO)を導入している企業がほとんどだと思います。日本の企業でも目標管理制度を導入し運用している企業も多いことでしょう。
目標管理制度とは、期初や半期の最初のその期間に取り組む個人の目標を上司と相談しながら決定し、期末や半期の終わりなど、一定期間が過ぎた時に、その成果・結果を元に点数付けする制度になります。
目標管理制度の運用はいままで当たり前のように運用されてきましたが、多くの企業には以下ような課題を抱いていました。
- ビジネスの変化が早く、設定した目標はすぐに変わってしまうことが多い
- 期末の評価やフィードバックのコメントを記入するのに評価者であるマネージメントの多くの時間が費やされている
- 評価を行うことがはたして企業や社員にとって継続積な成長やよい効果をもたらしているのか
など、評価制度を運用するために多大な時間と労力をかけているものの、その効果に疑問をいただく企業が増えてきたのだといえます。
3. 評価の目的は報酬の決定から部下の育成へ
また、従来の評価の目的は、一定の評価基準で社員に点数をつけ、賞与の支給額や来期の給与など、報酬を決定する目的でも利用されてきました。
しかし最近では、「何の目的で評価を行うのか?」という目的が、従来の報酬額の決定から、部下やスタッフに適切なフィードバックを行う「育成」の面が重要視されてきたことも1つの傾向といえます。
そこには、現在の多様な働き方やビジネスの環境が複雑に変化していく中で、従来の画一的な人事制度や評価制度では横並びに評価するのではなく、1人1人の個性や能力に着目した、継続的な評価やフィードバックを行い、個々のパフォーマンスを高めることが結果として組織や企業全体のパフォーマンスにつながると考える企業が増えてきたのだといえます。
4. 継続的な評価マネジメントは定期面談から始めよう
目標管理制度(MBO)で感じていた課題を解決するため、企業はより短いサイクルで定期的・持続的な評価マネジメントシステムを導入しています。
具体的には上司と部下の定期的な「面談」 を通して、その都度状況に合わせた適切なフィードバックや部下の育成を行う企業が増えています。
定期的な面談を短いサイクルで行うことで、環境の変化にも対応できる意味のあるフィードバックや継続的なフォローが可能となります。
上記から見えるのは、従来の「マネジメント」はマネージング=管理するという意味合いが大きかったと思いますが、これからは、いかにして部下やスタッフの能力やモチベーションを向上させ、活躍できる人材に育てていくかという育成マネジメントの力が求められる傾向にあるともいえます。