
1. 上司と部下の定期コミュニケーションの方法としての1on1ミーティング
「働き方改革」や「リモートワーク」、紙からPCやスマートフォンなどのデジタル化へ労働環境が変化していく中で、社内での社員同士のコミュニケーション不足が問題と言われるケースを多く見かけるようになりました。
仕事はチャットやメールなど直接対面で話をしなくても進められますし、そもそも一緒に働くメンバーは社内におらず、自宅や別のオフィスなど、場所と時間にとらわれない働き方で仕事をすることがあたり前の時代になってきました。
そうなると1人1人の様子がわからなくなり「あいつはいまどんな状況だ?」という質問や社内のコミュニケーション不足から、部下のモチベーションの低下、育成がうまくいかない、メンバーの生産性の低下、退職など様々な問題を引き起こすことになります。
そこで登場する取り組みの1つが、上司と部下が定期的にコミュニケーションを取る時間を設ける「1on1ミーティング」という定期面談です。
「1on1ミーティング」では上司と部下が1対1で対面で話を行います。上司は聞き役になり部下の課題意識や悩みを聞き、適切なアドバイスを行います。
この「1on1ミーティング」によって上司と部下が定期的にコミュニケーションを取る機会が設けられます。
それにより、部下の悩みも解決し、上司も部下の状況を理解。
その結果、社内のコミュニケーション課題が解決して、チーム・組織としての生産性の向上、社員も前向きに仕事に取り組むようになりました。
めでたしめでたし。
と、良い結果を得られた会社もあるかと思いますが、その一方で、期待した成果や思ったような効果を得られない会社も多くあると思います。
- 1on1ミーティングを始めたのに続かない
- 1on1ミーティングを行っているがいまひとつ効果がわからない
「1on1ミーティング」の本やWEBで「1on1ミーティング」を検索すると、大抵は1on1ミーティングのやり方や、上司のミーティングの姿勢について書かれていることが多いと思いますが、今回は少し違った見方で考えてみたいと思います。
2. 目的に合わせた面談をアレンジすることが大事
これは色々な参考書にもWEB上にも最初にかかれていることですが、「そもそも1on1ミーティングを行う目的」をはっきりさせることがとても大切です。
最近は働き方改革により多くの会社が残業時間の上限を意識するようになり、いままで以上に労働時間の規制が厳しくなっていると思います。
少しでも業務を行いたい中で時間を割いて行う「1on1ミーティング」にそれなりの「目的」や「納得感」がなければ1on1ミーティングの時間をネガティブに受けとめてしまうことが考えられます。
- 忙しいのに早く終わってほしいな
- 違うことに時間を使いたいのだけど・・
などネガティブな気持ちのまま面談を行ってもその面談がよい時間になるとは到底思えないと思います。
そのためまずは「1on1ミーティングを行う目的」を明確に決めることが必要になります。
1on1ミーティングの目的というと、上司と部下のコミュニケーション機会を増やし、信頼関係の構築、部下のキャリア形成や、相談、悩みに対してのアドバイスやフォロー、現在の業務対しての状況把握、期初に設定した目標に対しての状況の認識合わせなど、目的にするテーマも多岐に渡ります。
結果的にはこれらのテーマが混ざりながら面談を行うことが多いと思いますが、あれもこれもと話をするよりも「この1on1ミーティングは○○について話すものです。」としたほうが参加する上司も部下も面談を行いやすいと思います。
また、目的がはっきりすることで「1on1ミーティング」がそもそも解決手段として適切な手法なのかも見えてくるはずです。
1on1ミーティングというと「上司と部下」「1対1」という形にどうしてもなってしまいがちですが、1on1ミーティングは手段の1つなだけですので、必ずしも上司と部下が1対1で行う面談である必要はないと思います。
そのやり方や手法は会社の状況やメンバーによって異なるとは思いますので、1on1ミーティングのフレームを元に、自分の会社にあったやり方にアレンジすることが大切だと考えます。
3. 得られた情報は関係者で共有、属人化しないことが大切
1on1ミーティングでは「上司と部下」の間で行うコミュニケーションですが、そこで話された内容はどうしてもその2人の間でクローズされてしまい、周りの関係者にうまく共有されないことが多くあります。
結果として
- スタッフや社員の様子は面談を行った上司に聞かないと把握できない
- 上司と部下がどのような話をしているのかわからない
- 1on1ミーティングをそもそも行っているのかどうかも不明
など、せっかく1on1ミーティングを実施しても、情報がうまく共有されないことによる支障が発生してきます。
当然「信頼している上司にだけは話します」という情報も中にはあると思いますので、どこまで面談で知り得た情報を関係者に共有するのかは、上司の判断になる部分はあるかと思いますが、
- 1on1ミーティングを実施したかどうか、
- 1on1ミーティングの中で報告(エスカレーション)することはあるか
程度のルールにしてしまうと、情報の共有が不十分になってしまい、結局、1on1ミーティングを行っている当事者同士でしか状況がわからない状況になってしまいます。
関係者への情報共有では、社内のグループウェアや専用のツールを使う、エクセルに書いて共有するなど方法は色々なやり方が考えられますが、できるだけ内容はデジタル化して、過去に行った面談記録が蓄積できる仕組みが望ましいと思います。
1on1ミーティングの記録を蓄積していくことで、その本人の思考の変化や状況の経過を全員が把握、見えるようになることは1on1ミーティングを直接行っていない関係者にとってはとても貴重な情報となります。
4. メンバーからの定期的な意見やフィードバックを聞く
1on1ミーティングを行うと、どうしても部下やスタッフの情報は、面談を行った上司を経由して関係者に共有されていくことになります。
1on1ミーティングで目の前にいる上司は自分の言葉や想いを適切な言葉に変換してくれてとても有意義な面談を実施しているケースも多くあると思いますが、一方で「自分の話をわかってくれない」という不満を抱いているかもしれません。
また、そもそも1on1ミーティングの目的を理解していなかったり、上司が一方的に話して終わってしまう、話が噛み合わないなど、色々な課題や問題があるケースも多いと思います。
前向きな意見も、ネガティブな意見もどちらもあることを前提に、1on1ミーティングの対象者である部下やスタッフとなるメンバーから上司を通さずに1on1ミーティングに対しての意見や感想を聞く機会を設けることが大切です。
意見や感想はなるべく率直な意見が聞けたほうが、今後の1on1ミーティング運用の改善ポイントになるため、アンケート形式などで定期的に意見を集める仕組みがあるとよいものとなります。
尚、部下やスタッフの不満が告げ口と捉えられると、本音が聞けない可能性があります。そのため、集めた回答は公開されないことを事前に伝えたり、匿名で意見を集めるなどの工夫が必要となります。
「1on1ミーティング」という言葉に執着すると「上司と部下が1対1で定期的に面談を行う」という話に注視しがちですが、目的をはっきりとさせることで、自分たちの会社にあったミーティングスタイルが出来上がればよいと思います。
また、大切なのは、実施することも大事ですが、実施した内容を適切な関係者と共有・活用すること、面談者(上司)からの話だけでなく、被面談者(部下やスタッフ)からの意見を聞く機会を設け、常により良い運営方法を考えながら運用することが大切になります。